家系ラーメン集◎黄金町「千家(本店)」

 一口に家系ラーメンといっても様々で、その一杯を味わうことだけでなく、いわばひとつの趣味として、その一杯との出会いを収集したくなるものである。


 さて、今回訪れたのは横浜は黄金町、京急沿線のお店「千家(本店)」。1回目に訪れた時は、まさかの臨時休業(家系フェスティバル出店の為)。次に訪れようと試みた日は自らの胃袋の不調でありつけず、今度こそという思いで、満を持しての訪問だ。

 

 この日は夜も暑い日だったが、さぞ暑かろう厨房では寡黙そうな店長と思わしき方が平たいざるで湯を切る。無口で怖そうだが、限られたカウンター席に団体客を案内する際の口調などはとても丁寧で、仕事に対する静かな熱意を感じられる。

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 タレの着色が控えめで乳白色のスープ、それに特徴的なゴマが浮かぶ。なんでも家系ラーメンにゴマを入れるのはここが発祥のようだ。


 スープをまず一口、その印象は、いわゆる家系のファーストインプレッションとは異なる。さらっとしており、舌触りだけで言えば醤油ラーメンのような軽さだ。液面に浮かぶゴマの風味がさらにその上品さを演出する。麺もまた家系の中ではかなり細い部類の麺で、小麦感というよりはツルツル喉越し感。サラサラとしたスープが適度に絡み、抜群のコンビネーションだ。


 家系ラーメンのスープは「豚骨醤油」とよく言われるが、「吉村家」を始めとする直系の家系ラーメンのスープを一口すすると、まず醤油感のエッジが来て、後から豚骨がボディブローのように胃袋を刺激する。この両者のバランスが家系ラーメンの味を決め手に需要な要素であり、その店を特徴付ける。その様々なバリエーションを探求したくなるのである。

 

 今回の「千家」は直系とはまた違う雰囲気のスープではあるが、パンチのある醤油感は確かに存在し、豚骨はそれを邪魔しないように支えるようなバランスだ。こってりなのに重過ぎない。加えて、「千家」特有のゴマの印象は、再びこの「千家」へと人々を誘う。その個性に、病み付きだ。

 

(著者SNS過去の投稿より転載。一部改編。)